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2011年12月24日土曜日

もう一つの沖縄戦 「戦争マラリア」を知っていますか


娘夫婦のお供で石垣島をはじめとする八重山諸島に行ってきた。1223日には石垣島周遊をした。案内をしてくれたのはタクシー運転手のTさん。三線の講師もされている方で大変能弁で6時間の案内をしてくれた。ぜひ太平洋戦争の関連の遺跡も案内してほしいとお願いすると、「そんなことを言う観光客は非常に珍しい。私はその話をいつもしたかった」といわれた。そして「八重山平和祈念館」に連れて行ってくれた。

平和祈念館は石垣市の市街地の新栄町79番にあった。平和祈念館は「『戦争マラリア』の実相を後世に正しく伝えるとともに、人間の尊厳が保障される社会の構築と、八重山地域から世界に向けて恒久平和の実現を訴える『平和発信拠点』の形成を目指」して1999年につくられた。http://www.pref.okinawa.jp/yaeyama-peace-museum/html/hajimeni.html
戦争マラリアに関する写真・地図・絵・遺品類が展示されている。

「戦争マラリアとは太平洋戦争の末期の1945年に、沖縄県八重山郡の住民が、日本軍の命令によってマラリア有病地帯へ強制移動させられ、多くの方がマラリアに罹り、3647名がなくなった(罹患者は全人口の54%、死亡者は全人口の10.4%)」(平和祈念館ビラ)事件だ。

沖縄本土の戦いは米軍の上陸があり、その先頭の関連で20万から24万人が死亡した。しかし八重山では米軍の上陸作戦がなかったにもかかわらずこれだけの死者をだしている。敵の攻撃のためではなく、味方の軍隊による強制集団疎開により死亡した。軍は米軍の侵攻に備えるためと称して、住民の反対を押し切ってマラリア蔓延地域に強制疎開させた。

マラリアは現在でも有効な予防注射がない。最大の予防は蚊にさされないことだ。死亡率の高い病気で、世界で年間150万人が死亡している。1945年当時でもマラリアの恐ろしさは周知されていた。マラリア蔓延地域に強制移住させることは、住民を死の淵に追いやることと同じだ。国民を守るはずの軍隊が、国民を死に追いやったのだ。先のTさんは「戦争マラリア」の資料を探しに靖国神社の遊就館に行ったが一言も触れられていなかったと言われた。史実から目を逸らしてはならない。

八重山諸島は亜熱帯の風物が楽しめる素敵な地域だ。ぜひ行きたいと思っている人は多い。沖縄本島での沖縄戦の真実を知るための「平和学習」もねばり強く続けられている。八重山地域見学、平和祈念館見学も「平和学習」に組み込まれることを推奨する。

2011年12月18日日曜日

「高齢者の摂食嚥下障害に対する人工的な水分・栄養補給法の導入をめぐる意思決定プロセスの整備とガイドライン」は「脳死臓器移植問題」に匹敵する日本国民の生死にかかわる問題だ


厚生労働省は平成23年度老人保健健康増進等事業として「高齢者の摂食嚥下障害に対する人工的な水分・栄養補給法の導入をめぐる意思決定プロセスの整備とガイドライン」
http://www.l.u-tokyo.ac.jp/dls/cleth/guideline/1112ahn_guideline.pdf作成をおこなっている。背景には「高齢者ケアにおいて、食べられなくなった時に人工的水分・栄養補給法を導入するかどうか、導入するとすれば、どのようなやり方にするかは、臨床現場において迷い・悩みの多い問題」がある。ガイドラインは「これをどう考えたらよいかについて、関係者たちの共通理解を形成していくこと」を目的にしている。ガイドラインの必要性については理解できる。

以下、本ガイドラインについて若干意見を述べる。
1. 医療・介護における意思決定プロセス
「医療・介護従事者は、患者本人およびその家族とのコミュニケーションを通して、関係者〈当事者〉が共に納得できる合意形成とそれに基づく選択・決定を目指す。」としている。「共に納得できる」ことが重要だが、本人の意思と自己決定を尊重するのが大前提になる。そのための事前の意思の表明(いわゆる事前指示)の重要性にも言及していただきたい。また医療・介護従事者と患者本人および家族の選択決定だけではなく、利害関係のない第三者が入った倫理委員会等が決定の妥当性を検証できる仕組みが必要だ。

2、いのちについてどう考えるか
「生きることは良いことであり、多くの揚合本人の益になるーー このように評価するのは身体的生命が不可侵の価値をもつからではなく、本人の人生が生きがいのある、前向きに生きられる状況である限り、より長く続いたほうが良いという価値観が私たちの文化において支配的であるからにほかならない。医療・介護従事者は、このような価値観に基づいて、本人にとって真に益となる途を、個別事例ごとに見極める努力をする。」
これは非常に重要な問題である。「本人の人生が生きがいのある、前向きに生きられる状況である限り、より長く続いたほうが良いという価値観」が日本社会の一般的価値観なのか。「本人の人生が生きがいのある、前向きに生きられる状況で」なければ早く終わればいいと言えるのか。意見は大いに分かれると思う。一人の個人でも自分自身の場合と家族の場合では意見が異なることが多いのではないか。国民的議論が必要である。

3. AHN導入に関する意思決定プロセスにおける留意点
AHN導入をめぐって、何もしないことを含め候補となる選択肢を挙げて、公平に比較検討し、医療ケアチームと本人・家族の双方が納得して合意できる点を求めて、コミュニケーションを続け、医学的に妥当であり得ることは当然のことながら、なにより本人の意向(推定も含め)と人生にとっての益・害および家族の負担や気持ち、また可能な生活環境の設定等を考え併せて、個々の事例ごとに最善の選択肢を見出す。」
家族の介護負担や介護施設の受け入れ条件が本人の判断に影響をあたえる可能性を指摘している。それとともに医療・介護の一部負担等の経済的負担の軽減についても考慮する必要がある。
またそもそもこのガイドラインが医療費削減の目的のために使われてはならない。「個々の事例ごとに最善の選択」に対し保健適応が外されたり、保険査定の対象にされたりしてはならないことにも言及していただきたい。

これは「脳死臓器移植問題」に匹敵する日本国民の生死にかかわる問題だ。医療関係者のみならず国民的議論を望む。

2011年12月17日土曜日

市民の手で自然エネルギーづくりを推進し、原発をなくそう 12月8日原発ゼロ大阪大学習交流会


1217日「原発をなくし、自然エネルギーを数維新する大阪連絡会(原発ゼロの会・大阪)」主催の原発ゼロ・自然エネルギー推進大学習・交流会に参加した。原発ゼロの運動と自然エネルギー普及推進の活動を合わせて推進しようと改めて思った。

日本環境学会会長の和田正先生から「自然エネルギーの可能性と日本での普及推進」と題する記念講演があった。地球温暖化の破滅的未来を回避するための戦略として、①省エネルギーとエネルギー効率の向上 ②脱・原発、脱化石資源と自然エネルギー普及が必要と提起された。これまで日本政府は温暖化対策を理由に原発推進を言ってきたが、原発を増やしてきた日本が温室効果ガスの排出を増加させ、原発を減らしているドイツ・イギリス・スウェーデンなどが温室ガスの排出を減らしている事実を示された。その違いは再生可能エネルギー利用量の増加の違いにある。歴代の内閣は原発中心のエネルギー政策に固執し自然エネルギー推進に転換できていない。ドイツなどでは政府の政策を転換させるとともに、市民・地域主導の自然エルギーを生産する活動があることが紹介された。日本でも市民が共同で出資してつくった「市民共同発電所」が185基あり1万6千キロワットの発電している。(079月現在)この活動が全国各地域で発展すれば地域での新産業の発展、雇用喪失・増加につながる。そして政府の政策を転換させ原発ゼロの安全な社会を実現する。

野田首相は福島原発事故の収束宣言をした。あわせて先日、日本の原発を海外に輸出する原子力協定の承認を国会でおこなった。福島の事故から何も学ばず、脱原発を願う国民の意思をないがしろにする行為だ。
脱原発へ政策を転換する政策とともに、市民の手で自然エネルギーをつくり出す運動をしたい。和田先生どうもありがとうございました。



2011年12月11日日曜日

日本の国民皆保険制度は大きくほころび、すでに底が抜けている 全日本民主医療機関連合会 ソーシャルワーカー委員会報告


123日全日本民主医療機関連合会 ソーシャルワーカー委員会は「医療費・介護費相談及び無料低額診療事業利用者分析調査報告」を発表した。
http://www.min-iren.gr.jp/inochi-inken/kokuho/data/2011/111208_01.pdf

「貧弱な社会保障制度・経済施策のために生活が困窮し、受療権・介護を受ける権利が侵害されている実態です。かつての医療費相談では、対象者は無保険、国民健康保険の方が大半でしたが、現在は社会保険の方も多く、保険種別に関係なく、生活困窮の深刻化がうかがえます。」現在の日本で医療が必要でお金がないために医療が受けることができない人がいることが報告されています。

日本の経済がいかに大変でも、このような状況は不公正の極みです。政府民主党が言辞をろうし「税と社会保障の一体改革」と叫んでも、金のあるなしで人のいのちが左右される事態を放置していれば、増税が社会保障の充実につながるとはだれも思いません。今年の10月中国で、交通事故で瀕死の子どもが放置された事件が話題を呼びました。医療へのアクセスが制限されている状況を知らん顔していては他国民を批判することはできません。

資料 「医療費・介護費相談及び無料低額診療事業利用者分析調査報告」全日本民主医療機関連合会 ソーシャルワーカー委員会 より

<死亡のケース>
会社の寮に住み、食堂のまかないの仕事をしている。胃の不調があったが、市販薬でやりすごしていた。資格証発行されており、受診が出来なかった。役所で1万円を支払い6ケ月の短期証を発行してもらい、ようやく受診。外来で胃カメラをして、胃癌と判明。余命数ケ月と思われた。入院後、手術をするが、その後状態悪化。入院後12日で死亡。入院し、生活保護を申請した。(66 男性)

ホームレスの方。年末から体調悪く、何度か当院の前まで足を運んでいたが、受診する勇気なかった。救急搬送後、3日で死亡。(67 男性)

もともと他院で通院、入院歴ある人だが、社会保険のある会社を退職後、保険加入せず中断していた。
当院初診で早期受診するも、3時間後に死亡。音信不通だった他件在住の家族と連絡とれ分割払いとなる。(46 男性)

2011 2 月に腹痛があり、食事が摂れなくなり、当院へ時間外外来受診。無保険であり、医療費の支払いが困難であると相談あり。ご本人は、アルバイトをしていたが、最近は体がしんどくて、働けなかった。貯金を切り崩して生活していたとのこと。外来受診と同時に国保証発行と生活保護申請を行う。初診後、1ヵ月ほどでお亡くなりになる。(60 男性)

17 年程前から飯場の寮で生活している。収入は月により変動があり、寮費を除くと手元にお金がほとんど残らない状態。年金、貯金はない。外来受診・入院の費用の支払いが困難と相談あり。10 7 日入院時に生活保護申請し、生活保護受給となる。癌性胸膜炎が見つかり、12 11 日お亡くなりになる。(61 男性)

借金返済に年金をあてているため生活が苦しく、タクシー運転などで働いているが収入は少なく、国保料を2年滞納。無保険の状況であったが、体調の悪さを感じ受診したところ、胃癌の診断を受け、入院が必要と言われたということで相談に来られる。なけなしの5,000 円でとりあえず国保証を発行してもらい、減額認定証の申請も行なうが、手術で転移がみつかり、一カ月ほどで本人は亡くなられた。(68 男性)

タクシー運転手の夫との2人暮らし。救急車で搬入された時、肝硬変にて入院。夫とは離婚して、自分は保険加入もなく収入もないとご本人は言っていたが、入院後、夫のタクシー会社を通して数日後にやっと夫が来院。まだ離婚届を出さず、手元に持っているので妻も社会保険の家族の資格あることがわかる。しかし、夫の月収は8万円で入院費は払えないと相談を受ける。夫が生活保護の申請に行き、生保決定。その頃にご本人は死亡。(68 女性)

本人は長年障害かかえながら介護サービス利用し、療養生活送ってきた。当時より借金あり、医療、介護費未払い続き、援助の途中で死亡。家族との相談続けており、残った医療・介護費の支払いについて再び相談。本来は本人の年金18万あるのだが借金(年金担保)との相殺で半分の9万となっていた。(80 男性)

自宅でコンピューター関係の仕事をしていたが、仕事がなく収入が減って借金返済もあり、国保料を月2、3~4万円分納していた。(収入申告していなかった為、国保料が5万ちかくになっていた)それでも資格証だったため、受診できず、病状は進行し当院受診した時はガンの末期で予後1、2カ月という状況であった。収入、貯金ゼロのため生保申請し治療開始2カ月後死亡。(55 男性)
心不全(重度)にて救急受診。生命の危険があるため、救急入院をすすめるも、本人経済的理由で家に一人でいる認知症の母を心配して入院拒否。ケアマネージャーの説得で、生活保護に事情を話して
医療費の心配がなくなり、しぶしぶ入院に納得される。次の日の朝、病状急変し、当院にて永眠。具合が悪くても本人が受診をずっと拒否していたケース。退職したばかりで保険の加入もなかった。(42 男性)

2011 2 23 日当院初診。1月下旬から下痢が続き、食欲も低下していたため3 1 日知人の付き添いのもと受診となり、精査入院。3 2 日医療相談室へ来室し、生保申請の希望確認。もともと仕事(収入)少なく、無保険だった、また家族とも疎となっており、同日生保申請し、3 1 日分は国保加入も検討したが医療費を保険料が上回るため自費で支払う形となった。診断は直腸癌で末期であり、318 日入院中死亡。(56 男性)

夫婦、三男の3人暮し。肺癌で入院。前医で差額ベッド代多額に。支払い貯金が底をつく。家族の収入のみでは療養病棟は選択できず、かといって日中等パートで不在で、全介助、癌末期の方の在宅介護も困難という状況。土建国保の貸付け利用しながら、転院の話になったが、当院でお亡くなりになる。(67 男性)

30 歳頃知人の喫茶店の手伝いのため○県へ移り住むが、経営不振で喫茶店を閉店。妻と離婚、子ども二人いるが音信不通となっていた。15 年ほど前から代行業へ住持、スーパー銭湯や代行の事務所に寝泊まりし生活をしていた。2010 年の6 月頃から腹水、下肢浮腫を自覚、9 月になり食事がほとんど食べられなくなっていたが本人は「保険証がない」「税金を払っていないのだから生活保護には世話になれない」と受診をためらっていた。見かねた友人が当院へ相談、10 17 日初診、入院し生活保護申請に至った。受診当日も下肢浮腫、腹水がひどく、るいそうも見られたが「働かないと生活ができない」と代行の仕事へ行こうとしていた。C型肝炎および肝硬変、肝がんの診断で、7cm を超える腫瘍がみつかった。入院から6 日後に急変、多発性肝硬塞疑いにて逝去された。(数十年間受診したことがなかった。)(71 男性)

約半年前に会社を解雇され、その後行方不明となり、兄が捜索願を出していた。車中生活をしている所保護され、家族が引き取りに行き、体調不良だったため当院受診し、そのまま入院となった。受診時保険証所持しておらず、国保加入手続と限度額認定の手続を行ったが、6日後に急変し、死亡退院となった。(42 男性)

2011年12月10日土曜日

国境なき医師団 TPPで途上国向けの安価な医薬品の供給が脅かされると訴える

国境なき医師団は
TPP:知的財産権保護でジェネリック薬の供給が脅かされる恐れ――TPPが途上国向け医薬品の供給に及ぼす影響について、MSFは日本政府に考慮を要請」(20111107日掲載)と題する文章をHP上に掲載している。http://www.msf.or.jp/news/2011/11/5363.php

「日本政府が環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に関する協議参加への検討を進めている中、国境なき医師団(MSF)TPPに盛り込まれた知的財産権の保護に関する条項によって途上国向けの安価な医薬品の供給が脅かされると訴える。」
「市場競争を抑制する政策は、安価な医薬品で数百万人の人びとの命を救おうとする取り組みをも阻むものです。途上国における安価な医薬品へのアクセスの促進は、日本の貿易政策の要であるべきです」

TPPは単なる自由貿易協定ではなく、すべての非関税障壁撤廃という名目で知的財産権保護の強化を組み込みこんでいる。医薬品の分野では安価なジェネリック医薬品の販売を規制する。そうなれば安価な医薬品へのアクセスが困難になる。途上国への医療支援で活躍する国境なき医師団が危惧を表明するのは当然である。

TPPは農業だけではなく医療にも大きく影響を与える。米豪FTAにおいてオーストラリアが米国より公的医療保険による薬価負担制度の見直しを要求された。米韓FTAでも薬価の見直し機関が韓国に設置された。TPPにおいても、アメリカは交渉参加国の公的医療保険制度の見直し医療の自由化=営利化を強く求めている。

15%以上の無保険者を抱えるアメリカの医療制度は最悪である。その制度のもとうまい汁を吸うアメリカの医薬産業の荒稼ぎの場を環太平洋につくらせてはならない。


維新教育基本条例案堺市議会委員会で否決 教育委員会も明確に反対

12月9日づけの朝日新聞によると
「堺市議会文教委員会は8日、大阪維新の会の堺市議団が提出した教育基本条例案について、維新を除く全会派の反対で否決した。15日の本会議にも上程されるが、否決となる見通し。」

「堺市教委の海部孝治委員長は文教委員会の質疑で、条例案について『教育行政の政治的中立を否定するもので、子どもの教育に望ましい影響を及ぼすとは考えられない』と述べた。」とのことである。教育基本条例反対運動の成果である。維新の会がすすめる「教育改革」は思想信条の違いを越えて、多くの人反対している。堺市教育委員会も下の資料のような見解を表明している。大阪府議会での審議採決へむけ反対運動を強めたい。

選挙当日一日だけの主権者ではなく、365日主権者であることを府民に訴えます。教育基本条例案反対しましょう。

.資料
平成23年 12 月 8日
堺市教育基本条例案について
堺市教育委員会
1 教育の本質と政治的中立
教育は、次代を担う子どもたちの人格の完成をめざすものであり、この目的を達するためには、子ども一人ひとりの個性、創造性、自発性が尊重され、人として持っている潜在的な能力が十全に発揮できるよう、環境を整え、施策を実現していくことが重要である。これらの教育の理念は、社会がいかに変化しようとも変わらない教育の本質的・普遍的原理である。教育の政治的中立とは、特定の政治教育を行ってはならないという意味に狭小化してとらえるべきではなく、政治的見解によって、教育環境、教育施策が変遷することにより、教育の本質的・普遍的原理が歪められることのない制度設計を確立することを意味する。
この教育の政治的中立を確保するために、多様な属性を持つ複数の教育委員による合議制である教育委員会制度が設けられているのであり、条例案は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律に反するとともに、政治介入を厳に戒める教育基本法の趣旨にも反するものである。
2 教育に対する首長の関与
首長は議会の同意を得て教育委員を任命し、教育に関する予算についても、その調製権限を有する。また、社会のあらゆる環境が子どもの健全な成長に関わるという観点から、教育行政においても、首長や首長部局による一般行政との調和を困ることも必要となる。
しかし、首長が目標を定め、その目標に基づき教育委員会が指針を作成し。学校がその指針を基に学校目標を定めるといったシステムは、教育の内容や方法についても首長がその権限を有することとなり、教育行政の政治的中立を担保している教育委員会制度そのものを否定するものである。
3  教育行設と民意の反映
教育は、子どもの発達・成長を軸に継続性・一貫性をもって行うことが重要であり、教育行政についても安定性・連続性が求められる。
教育行政における民意の反映については、そもそも、首長が議会の同意を得て教育委員を任命すること、地方自治法により予算を調整することは首長の権限とされ、また、その予算の成立には識会の同意を要すること、学校教育法施行規則により学校運営に関し意見含述べることができる学校評議員の設置が規定されていること等、これを担保する制度が存在する。
教育要員会は、これらの規定の趣旨、諸法規の理念を踏まえ、子どもの育ちとそれを支える保護者や地域住民の多様な意見に立脚しつつ、教育行政を遂行するものである。本市の場合で言えば、「未来をつくる堺教育プラン」を、民意を反映させつつ継続的かつ確実に推進していくことが、教育委員会の責務と考える。すべての学校園においては、学校協議員を設置し、保護者や地域住民の意向を把握するとともに、学校園のホームページ等を活用し、情報の発信にも努めている。また、教育委員会においても、PTAとの懇談会や日々寄せられる市民からの声等を通して、民意を教育行敢に反映するとともに、教育の基本的な方針の策定にあたっては、全市立学校園の保護者、児童生徒を対象とした調査の実施、保護者の代表等からなる懇話会からの意見聴取及びパブリックコメント制度の実施など、幅広く意見集約を行い、民意の反映に努めているところである。
4 結論
本条例案は、教育行政における政治的中立性を否定するものであり、教育関連法規に抵触するおそれのある内容が多く含まれており、将来にわたり、本市の子どもたちの教育に望ましい影響を及ぼすものとは考えられず、教育委員会として是認できるものではない。

2011年12月9日金曜日

マスコミ各社は取材対象との飲食接待についての倫理原則の開示を



沖縄防衛局の田中聡局長が11月28日夜の報道各社との非公式の懇談での発言は不見識そのもので更迭処分は当然だ。

私がもう一つの問題だと思うことがある。
「懇談は28日夜、那覇市内の居酒屋で行われ、沖縄県内の報道機関約10社が参加。朝日新聞社は、発言時には同席していなかった。」ということだ。報道機関が取材対象と飲食を共にしていたという。会費があったということだが、飲食の内容は会費で賄えるものであったのか。接待ではないのか。報道各社は収賄・買収とは違うということを説明する責任がある。

国民は報道機関に真実の報道を期待している。また権力にたいする監視役を期待している。飲食を共にすることで情報を収集しているという名分もあると思う。しかし飲食を共にすることが、取材対象とのなれ合いの関係をつくるのではないかと危惧する。ぜひ国民の不信を払しょくしてほしい。

マスコミ各社は取材対象との飲食接待についての倫理原則を開示をする必要がある。

2011年12月5日月曜日

教育基本条例案反対12月6日「堺からのアピール」賛同のつどい&デモンストレーションに参加しました



ダブル選挙から1週間。マスコミは橋下礼賛のオンパレードです。しかし草の根では、子どもたちを教育破壊から守るための運動が続いています。集会とデモをしました。デモに対し戦闘服姿の右翼が「日本から出ていけ」と罵声を浴びせました。「維新」と右翼は仲間だということがよくわかりました。
「教育基本条例案」、2月大阪府議会、大阪市・堺市両議会に審議が持ち越される模様です。じっくり腰をすえて反対運動をします。選挙で「維新」に投票した人も含めて多くの人に、教育基本条例の中身が伝われば大きな反対の声が上がると確信します。

2011年12月4日日曜日

御堂筋のイチョウの黄葉が美しい


今御堂筋の黄葉が真っ盛りだ。ことしは紅葉がどこでも美しい。イチョウの黄色も桜・はなみずきの赤もすてきだ。紅葉が終われば、いよいよ冬だ。今年は節電の冬だ。たっぷり着込んで、かぜをひかないようにしたい。

2011年11月30日水曜日

大阪ダブル選挙が終わって考えること  投票日一日だけの主権者ではなく365日主権者であり続けよう


大阪ダブル選挙が終わって3日が過ぎた。御堂筋もいつもの姿に戻り宣伝カーの喧騒もなくなった。維新の会圧勝と報道された選挙結果に多くの人が関心を持ち、諸所で話題になった。「橋下さんは何からしはるんやろ」と、期待と不安が混ざった声を聞いた。この行き詰まった大阪や日本をいい方向に動かしてくれるのではないか期待をもっている人が少なからずいる。そんな人たちが維新に投票したのだろう。「大阪や日本が今の延長線上ではなくいい方向に変わってほしい」という気持ちはみんな同じだ。しかしこれから「橋下さんがしはる」ことがみんなの暮らしや大阪を本当によくすることになるのかが問題である。注視していこう。観客ではなく主権者として。

投票日一日だけの主権者ではなく、今高まった政治への関心を持続させることが大切だ。大阪のためになることが進められているかに関心をもって知る必要がある。情報源はマスコミ報道だけではなくネットなどを利用して草の根の情報をよく知るべきだ。ぜひやっておきたいことは、大阪維新の会ホームページ http://oneosaka.jp/から彼らのマニフェストをダウンロードし保存しておくことだ。この4年間彼らが何を実行し何を実行しなかったか。実行したことがどんな結果を生んだかリアルタイムに実証する必要がある。橋下氏がその場その場で言うこともよく記憶しておくことも必要だ。前後で脈絡があっているか。首尾一貫しているかよくみていこう。

橋下氏は選挙後、民意に従えと選挙結果を水戸黄門の印籠のように掲げている。しかし選挙でどんなに多くの支持を集めても自治体の首長にはしていけないこと、できないことがある。それは憲法を無視することである。橋下氏は憲法を尊重擁護しなければならない。それがルールである。ルール違反にはレッドカードを突き付けよう。

第九九条【憲法尊重擁護の義務】
天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

我々は主権者である。その意志は主には選挙で行使される。それだけではなく意見や要求があれば、議員にも、自治体首長にもそれを主張することができる。そうすることで民主主義が守られる。4年後には選挙がまたおこなわれる。場合によってはそれより早く選挙があることもある。この選挙でだれにであれ投票した人も、棄権した人もみんな365日主権者であり続けよう。


2011年11月28日月曜日

大阪府・市民は選挙で白紙委任状を橋下徹氏に渡したわけではない これからだ


 11月27日午後8時投票箱の蓋が閉められた途端に橋下・松井両氏の当選確実が出たのには驚いた。出口調査で圧倒的な優位が確認されたのだろう。翌日の新聞を見ると全行政区で両氏が1位を占めている。文字どうりの圧勝といえる。大阪府・市民が維新の会候補を支持したのは明らかであると認めざるをえない。

 前日の26日道頓堀で平松候補の演説を聞いた。多くの聴衆が集まっていた。そのまわりを歩行者が通り過ぎていく。少なくない人が「なんや橋下君と違うのか」といって通り過ぎていく。橋下氏の演説ならぜひ聞きたいというのである。テレビに度々露出する橋本氏の話術・勢いが府市民の支持を集めているのである。みんなが感じている閉塞状況をひょっとしたら打ち壊してくれるのではない思わせているようだ。28日朝のNHKテレビが橋下氏の演説が選挙の帰趨を決めたと報道した。当たっていると思う。

 橋下氏は民意は大阪都・教育基本条例。職員基本条例を支持したと言っているが本当だろうか。大阪都が実現すればなぜみんながハッピーになるのかは誰も知らない。教育基本条例を施行すればなぜ教育がよくなるか誰も知らない。一つ一つの課題の議論はこれからだ。府市民は白紙委任状を彼に渡したわけではない。

 たしかに橋下氏は08年知事選挙、11年の一斉地方選挙、そして今回のダブル選挙と3回勝利した。しかしこれからである。今回の選挙で反独裁の共同行動が前進したこの力は教育基本条例反対の運動につながっていく。そして大阪都構想では、維新の会は大阪府知事と大阪市長の座と大阪府会の過半数を握っているが、大阪市と堺市では少数与党である。とくに政令指定都市堺の市長は橋下氏と一線を画す立場をとっている。4回戦は堺の市長選挙である。06年に政令指定都市になったばかりの堺市をなぜ分割することが市民のためになるのか。二重行政の弊害が具体的にどこにあるのか。それを議論することになる。プロ野球の日本シリーズなら零勝三敗の剣が峰に立った状態だが、それからの逆転優勝の例もある。府知事選挙では維新は堺でも断トツの一位であったが、テーマが堺の解体分割と具体的になればそうはいかない。堺の町衆の底力を見せたい。




2011年11月27日日曜日

韓米FTAに反対する韓国医療従事者と懇談



1119日ソウルで韓米FTAに反対する医療従事者と懇談した。その日はソウル市庁舎前で反対集会があった。その直後に懇談した。参加は韓国保健医療団体連合会の方6名と医学生1名だ。地方から集会参加のためにソウルに来てその夜のうちに帰る人もいた。

彼らが韓米FTAに反対するのはFTAにより韓国の医療が営利化され、医療費が高騰するとともに公的医療保険制度が崩壊させられるからだ。









FTAにおいて「医薬品・医療機器委員会」を設置することが合意された。それにより米国の医療機器輸出に対して規制を加えることが非常に困難になる。医薬品の認可が遅れた場合や薬価が低く抑えられた場合、米国企業が政府に見直しを求めたり、ISDInvestor-State Dispute Settlement条項を利用して世界銀行傘下の国際投資紛争仲裁センターに提訴されたりすることになる。国が主体的に薬価を決めることが困難になる。その結果、米国医療産業が望む高医療費構造が高額医療の負担が国民に課せられる.


韓国にはすべての国民が加入する公的健康保険制度がある。Non-Violation Complaint条項は米国企業が期待した利益を得られなかった場合、韓国がFTAに違反していなくても、米国政府が米国企業の代わりに、国際機関に対して韓国を提訴できるとしている。この条項で、米の民間医療保険会社や営利病院が「韓国の公共制度である国民医療保険のせいで営業がうまくいかない」として、米国政府に対し韓国を提訴するよう求める可能性がある。公的保険制度が崩壊しアメリカ型の医療制度にされる危険がある。

1026日の韓国・ソウル市長補欠選挙で、野党系無所属候補の朴元淳氏(パク・ウォンスン=55、当選翌日に市長に就任)が勝利している。勝因は「経済両極化」への市民の不満だった。朴氏は市民運動家で、格差社会をつくった大企業や財閥を強く批判してきた。来年の大統領選挙で李明博政権を倒し再び民主派の大統領をつくろうと意気があがっていた。韓国の民主運動は元気である。
韓国国会は22日、与党ハンナラ党主導で緊急の本会議を開き、米韓自由貿易協定(FTA)の批准法案を野党が反対する中で強行採決、与党などの賛成多数で可決した。これにより韓米FTAが来年1月初めにも発効する。 しかし民主党と民労党など反対派は全面的な「批准同意案無効闘争」を提起し、来年の政権交代を通じ、韓米FTAが無効であることを宣言するとしている。

日本もTPP問題を抱えている。日韓の医療従事者が情報を交換し、励ましあいながら「自由貿易」という名の下でアメリカの対外貿易拡大政策の重要な一環としてアメリカ型の医療を輸出しようとする企てに反対していきたいと思う。

2011年11月13日日曜日

「独裁」を肯定的文脈で使うことができるのか   「独裁経営者」ジョブス・柳井正は称賛されるべき経営者か


橋下徹氏が「今の日本の政治で一番重要なのは独裁。独裁と言われるぐらいの力だ」と公言し、彼の大阪府知事時代の言動に発言を合わせてハシズムの到来の危惧を覚える人がふえている。今回の大阪ダブル選挙では独裁対反独裁がひとつ大きな争点になっている。

そんな時朝日新聞1112日夕刊電子版にのった「〈@ニューヨーク〉5番街に行列を作った2人の経営者」の記事に目を引かれた。

「ニューヨークの目抜き通り「五番街」に10月の同じ朝、長蛇の列が二つできた。一つは59丁目にある米アップルの直営店の前に、もう一つは53丁目に開店した衣料品店(ユニクロ)の前に。」
その二つの会社どちらもカリスマ社長の独裁会社だというのだ。

「米国は元来、最高経営責任者(CEO)の権限が強く、基本はトップダウン型の企業統治が多い。しかしジョブズ氏とアップルとの関係は、もっと個人商店のようなものに思う。」
「このファーストリテイリングも柳井氏の独裁会社だ。極めて強いトップダウン型経営で、かつて自ら選んだ社長を3年で解任したこともある。その代わり機構はシンプルで、経営スピードが速い。」
その二つの企業が「大成功」しているという。天才的な才能をもった経営者が独裁的権限をふるい、自分の感性と創造力を発揮して強烈なトップダウンの経営を行ったことが成功の要因だという。記事は「独裁」を肯定的な文脈で使っている。

しかし企業の成功は何ではかられるのであろうか。一時の企業利益でしょうか。

ジョブス氏は従業員に対して専制的な態度をとったが、消費者に対しても同じではなかったのか。
私はiPhoneiPadも使っているが、どちらもパソコンなしでは使えないものだ。USB接続もできず、SDカードも使えない。Flash Playerも使えない。なぜなのか。ユーザーの声を聴かずにジョブス氏の趣味で製品をつくっていたのではないか。有力なライバルがなかったからヒットしただけではないか。もしもジョブス氏があと10年存命されたとしてもアップルの天下が続いたとは私には思えない。それを確かめたかった。

朝日の記事は続ける
「日米を代表する好調2社が創業者による強烈なトップダウン型であるのは、多くの日本企業の停滞を考えると示唆に富む。とはいえ、日本メーカーに限らず、アップル型をほかに求めるのもほとんど不可能だろう。独裁的な企業統治は可能でも、トップが世界的なヒットを立て続けに出せるセンスをもっている可能性はほとんどないからだ。」
ジョブスや柳井正のような天才が「独裁」をするのはいいが、そんな天才はあまり出ないというのである。本当に天才なら「独裁」をしてもいいのだろうか。

絶対に間違いをしない天才はいるのか。
年をとり肉体的、思考的衰え、そして死を迎えない天才はいるのか。
時とともに環境が移り過去の栄光ある経験が通じない時がこない天才はいるのか。
次代をになう天才を育てることができる独裁者はいるのか。

少なくともみんなが共通して思うのは、ジョブス亡き後のアップルはまもなく凋落するだろうということである。そうなればアップル製品を使ってきた消費者も、出資した株主も、そして従業員も困ることになる。「独裁経営者」は称賛されるべき経営者ではない。

企業経営者でそうである。独裁政治家は論外である。国民の利益にそう、いい独裁政治家などあるわけがない。「独裁」を肯定的文脈で使うのは慎みたい。

2011年11月12日土曜日

反独裁を明確に主張する平松邦夫氏を支持します ためらいを捨て反独裁で力をあわせましょう

13日には大阪市長選挙が告示されます。大阪では府知事選挙も同時に行われてます。このダブル選挙の最大のテーマは独裁政治を明確にめざす橋下維新をストップするか否かです。


橋下氏が独裁をめざしていることは明らかです。本人が「独裁が必要」と明言しています。 今のところ彼は選挙制度を否定していません。逆に知事は選挙「民」に選ばれたことを錦の御旗にして教育委員会も教師も職員も「民」に選ばれた知事の命令に従って動け、命令に従わないものは解雇すると恫喝してきました。さらに少数派の議員の批判に対しては「もっと議席をとってから言え」と居直るのです。そして要求を出す府民には「あなたが政治家になってそういう活動をやってください」「それはじゃあ、国を変えるか、この自己責任を求められる日本から出るしかない」と言ってのけるのです。たしかに知事も府会議員も選挙で府民に選ばれました。しかし選挙では、任期中の全ての政策が明らかにされ、そのすべてに選挙民が賛成して投票できるわけではありません。それどころか一つのキャッチフレーズが投票結果を左右することが多いです。それが現行の民主主義の限界です。だから選挙よって民の信託を受けた自分(達)に、すべてのものは従う義務があると言うような振る舞いするのは間違いです。選挙で選ばれた知事や府議会の多数派は皇帝でもなければ、支配階級でもありません。こんな政治を進める橋下氏は独裁政治の道を進んでいることは明らかです。彼は次は国政に進出すると明言しています。ここでスットップしなければなりません。


平松邦夫氏は反独裁を明確にしています。一切のためらいを捨て平松当選へ力をあわせましょう。立候補を辞退された渡司孝一氏の英断を高く評価します。たしかに平松氏の四年間の市政に賛成できないところは少なからずあります。しかし独裁に反対し民主主義をまもる点で一致します。今の局面ではこれが最優先課題です。


ヒットラーも最初は選挙で選ばれました。下品で無教養な男に何ができるかとの油断が足下をすくいました。まだ大丈夫との楽観が手遅れにしました。歴史の教訓に学ばなけばなりません。ハシズムノーを合い言葉に思想信条の違いを越えて力を合わせましょう。

2011年11月11日金曜日

「実行力のある橋下さんの方がましだ」と思う君へ


毎日の仕事ごくろうさん。大阪知事・市長選挙が始まっているね。おじさんはこの選挙は大阪だけでなく日本の未来を左右する選挙だと思います。ぜひ自分の頭でよく考えて投票してほしいと思います。君のお母さんに聞いたのですが、君は「橋下さんの方がわかりやすいし、実行力がある。橋下さんの方がましだ。」と考えているようですね。選挙は自分の判断で参加するものですから、だれを支持しても構わないのですが。もう一度よく考えて選択してほしいと思います。

橋下さんは「今までの日本の体制で利益を受け、このままずっと今のやり方でやりたいという勢力との戦いだ」と演説しました。なるほどわかりやすいですね。大阪のほとんどの人は「今までの日本の体制で利益」を受けていません。だから何とかいい方向に変わってほしいと思っています。でも橋下さんは、サラ金の御用弁護士として弱い者いじめをして数億円の年収を稼いでいた弁護士です。「今までの日本の体制で利益」を得ていた一人です。橋下さんは「どうして君は友だちがいないのか」(河出書房新社)でドラえもんにでてくるスネ夫のように強い者の下でずるがしこく生きることをすすめています。強者のパシリになれというものです。つらい目にあってきた人を救いたいとは思っていません。自分は今までやり方以上にもっとうまくやって利益を得たいと考えているのです。
そして一番問題なのは「今のやり方」を変えてどんなやりかたで、そして何をするかが問題です。いったん選挙で選ばれた首長は独裁的な権限で政策を実行できるようにしようというのです。府の権限に及ばない大阪市はつぶしてしまえ。議員数も減らしていろんな意見を持つ議員が選ばれる可能性を狭めてしまえ、政治から独立した制度になっている教育委員会も解体してしまえというのです。そして強い権限で高速道路の建設・関空へのリニア鉄道を引きたい。カジノも誘致したいと金利上限規制のないサラ金特区をつくりたいというのです。これはこれまでやってきた大型公共事業の継続です。そんなことをすれば、またまた赤字をだし大阪府・市の財政が破たんすることは明らかです。また現行法の縛りを突破しなければ実行することはできません。一時期かれは紳介のパシリでした。今は誰のパシリなのでしょうか。大型公共事業を期待する関西財界か、サラ金特区を期待する貸金業界か、カジノ建設を望む暴力団か、教育の政治支配をめざす右翼勢力か。

 橋下さんの「実行力」はどれほどのものでしょう。実行力を計るには、前に公約したことがどれだけ実現できているかをみればよくわかります。07年の知事選挙で橋下さんがどんな公約をしたか覚えていますか。
こんなものでした。「『おおさか』を笑顔にするプラン 子どもが笑う、大人も笑う大阪に」です。
 なんか笑ってしまいますね。この4年で大阪の笑顔が増えたとはだれも思いません。口のうまい橋下さんでも笑顔が増えたと強弁するのはなかなか難しいでしよう。17の重点事業を公約にあげていました。大阪府の採点でも「出産・子育てアドバイサー制度」「妊婦一般健康診査の受診回数を拡大する」「乳幼児医療助成を拡充」「駅前・駅中に保育施設を整備」「子どものいる若い夫婦への家賃補助制度を創設」に具体的取り組みを実施していないと×がついています。たいした「実行力」です。これでは大阪に笑顔が増えるわけはありません。人を攻撃するのは上手いですが、自分のしたことには反省の言葉は出てきません。
 橋下さんは高校の授業料を無償化したと評価する人がいます。それは誤解です。知事就任当初、逆に私学への助成を削減しようとしていたのです。0710月知事が高校生と私学への助成金削減プランをめぐり意見交換会を行いました。その場で知事はこういってのけました。「今の世の中は、自己責任がまず原則ですよ。誰も救ってくれない」「皆さんが完全に保護されるのは義務教育まで。高校になったらもう、そこから壁が始まってくる。それが世の中の仕組み。」「それはじゃあ、国を変えるか、この自己責任を求められる日本から出るしかない」です。しかし10年より大阪府の高校授業料無償化が実現しました。それは府民の要求運動が実現したものです。知事は仕方なく同意しただけです。弱肉強食の競争論理は君が一番嫌う考え方でしょう。
 橋下さんは3年間大阪府を黒字にしたといっています。しかし実際は府の借金は年々増えています。どうしてそうなるのでしょう。それは臨時歳入財政対策費という借金を収入に計上しているから見かけ上黒字になっているのです。粉飾決算の一種と言えます。少なくとも黒字を出したと自慢できるものではありません。まるで今話題になっているオリンパスみたいです。
一方選挙では公約もしてない、大阪都構想・WTCへの大阪府庁移転・教育基本条例には血道をあげました。その結果WTC府庁移転では防災対策の不備のため、200億を超える大きな損失を出しています。これが相手候補のしたことなら橋下さんはどれだけ口汚くののしることでしょう。
好きな人に告白ができない実行力のない人は嫌です。でも望まないことをしつこく続けるストーカーのような「実行力」のある人はもっと嫌です。
私たちに笑顔を取り戻すには、破たんがあきらかな大型公共事業ではなく、医療・福祉・教育に重点的に税をまわし府民の生活を底支えすることです。それにより雇用も増えます。今までと違う大阪・日本をつくりたいです。ワンフレーズに幻惑されず、よく調べてよく考えて投票してください。


2011年11月6日日曜日

またまたとんでも発言 枝野経産相      国内は脱原発、でも輸出は推進 「矛盾せぬ」


116日付の朝日新聞によると枝野幸男経済産業相は5日、早稲田大学で行った講演で次のように語った。

「リスクをどの程度重視するかは国によって違う。地震や津波がない国もあるが、日本は圧倒的に原子力を使うには適さない」
「わが国がいま持っている技術について海外の評価にこたえるのは、むしろ国際的な責任だ」
「(原発)技術を国内で使わなくなるかもしれないが、(外国が)評価するなら、それにこたえることは矛盾でない」
国内は脱原発・海外には原発輸出推進が矛盾しないと言うのである。

これは今年312日福島第一原発一号機ベント後に、彼が述べた「放出はただちに健康に影響をおよぼすものではない」に匹敵する歴史に残るトンデモ発言である。

国内は脱原発・海外には原発輸出推進がなぜ矛盾しないのだろうか。
日本は地震や津波が頻発するので原子力を使うのに適さないが、(危なかろうが危なくなかろうが)日本の原発を買う国があればうまく話をつけて売ればいいというのである。矛盾でなければ、不正義である。

まず知りたいのは、本当に日本は脱原発をすべきと枝野氏が考えているのかと言う点である。枝野氏が真に脱原発論者であれば、それはそれで歓迎するが、疑念が残る。脱原発への国民の意思が強いための仮の方便ではないのか。この点については今後の枝野氏の発言・行動で明らかになってくる。

枝野氏は外国には地震や津波のない国もある。その国が、日本の原発を買ってくれるならそれはそれでいいと言う。「日本の官民はベトナムやトルコ、ヨルダンなどへの輸出を目指し、交渉している。」(朝日新聞)ベトナムやトルコ、ヨルダンのどの国が地震や津波のない国であるのか。世界の地震地図を見てほしい。
 
地震分布の世界地図[ 出典Earthquake Search  USGS - U.S. Geological Survey 

相手の国が買おうというのだから売ればいいというは間違っている。かつて日本はアスベストが問題になれば工場を韓国に移転した。また水俣病を経験しながら水銀輸出禁止の要望がある中で、アジアで唯一水銀輸出を現在も継続している。福島を経験した日本が原発を輸出することで、またもやエコノミックアニマルという蔑称を受けたいのか。

福島原発の事故があっても原発を輸入したいという外国政府があることは事実であろう。日本がするべきことは原発事故の事実を国内外に明らかにすることである。またある特定の外国政府が原発輸入の意思を示しても、政策決定にその国の国民の意思が反映されているかと言う問題がある。日本政府がベトナムやトルコ、ヨルダンなどへ原発を輸出の働きかけをするというのであれば、脱原発を望む日本国民はベトナムやトルコ、ヨルダンなどの国民に原発の危険性について伝える必要がある。


2011年11月2日水曜日

今年はどんぐりの不作の年 これがクマ騒ぎの原因


今年はどんぐりが不作のようだ。正確に言えばコナラ(コナラ属)のどんぐりがほとんど見られない。しかしアベマキ(コナラ属)やクヌギ(コナラ属)には例年どおりどんぐりがある。コナラのどんぐりの不作は堺だけでなく河内長野でも同じだ。一本の木や一つの森だけではなく大阪南部全体が不作である。

こんな話を友人から聞いた。ちょうどその頃北海道で人里に熊が出没するとのニュースがマスコミを賑わせていた。きっとこれはどんぐりの不作と関係があると思った。そこでメールで北大の植物園に問い合わせてみた。

北大植物園からは「北海道でも、今年はドングリなどの山の果実が凶作となっているようで、ヒグマ の出没のニュースが毎日のようにされています。不作なのは全国的なもののよう ですね。本園でもドングリの類は不作となっています。」との返事が来た。大阪だけではなく北海道でも不作のようだ。

盛口満「どんぐりの謎」(ちくま文庫)によると、
 コナラには、”成り年”があるのである
コナラの成り年には、近くの雑木林は足の踏み場もないほどドングリで敷きつめられ、学校の冷蔵庫もどんぐりで一杯になる。でも不作年になると、どんぐりはまったくといっていいほど落ちていない。
ミズナラでも豊作・不作がある
(マテバシイは)毎年、安定した供給をもたらしてくれていた。
成り年は地域ごとにいっせいに起こる現象なのだ

おなじどんぐりでもコナラ・ミズナラには豊作・不作があり、マテバシイにはないようだ。成り年は地域ごとに起こるようだ。ことしは少なくとも大阪南部と北海道で同時に起こっている。日本全国で同時におこっているのかもしれない。

どういうメカニズムで豊作・不作がおこるのか不明である。盛口は木の休息による体力回復説、どんぐりを減らすことによりどんぐりを食害する動物たちの個体数を減らす時間的逃避説を紹介している。

北海道環境科学研究センター 主任研究員 間野 勉は「ヒグマ捕獲数の増加を読み解く」 http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/skn/grp/02/higuma_esa.pdf で次のように書いている。
北米のアメリカクロクマでは,クマの主要な秋の食物であるブナやナラ類の堅果の豊凶が,クマが人里に出没して人間と軋轢を起こす頻度に影響することが知られています.北海道でも,例えば渡島半島地域では,ブナ,ミズナラ堅果が少ない年に秋季のヒグマ捕獲数が多くなることが,道立林業試験場と環境科学研究センターの共同研究によって明らかになっており(今ほか,2005),堅果の豊凶が秋季の人里へのヒグマの出没頻度に影響していると考えられます

 今年はどんぐりの不作の年これが北海道のクマ騒ぎに関係しているのは間違いない。クマの射殺という残念な結果になっている。どんぐりの不作の原因の解明と適切なクマの食料の確保対策が必要だ。
  

クヌギのどんぐりはある

コナラにはどんぐりがみつからない

2011年10月31日月曜日

橋下徹 「どうして君は友だちがいないのか」(河出書房新社)にみる社会・家族そして処世術


橋下徹とはいかなる人物であるか非常に興味がある。橋下氏にはそれは困難な境遇から「社会的地位」を獲得した人に見られる危うさが感じられる。「どうして君は友だちがいないのか」から彼の人物像が見えてくる。

この本は、2007年にいじめに悩む中学生を対象に自身の経験を踏まえた対処法を書いている。
 こどものころの人間関係に悩む必要はない。
 うまくいかなくても自分の責任ではない。
 人間関係は変わっていく一時的なものだ。
 もし身の危険があるような場合は、強いもの手下になってスネ夫のように生きればいい。
 いじめられるのが嫌ならいじめる側になればいい。
 やがて出口は見えていくる。・・・・

彼がつらい子供時代を過ごし、学んだことがよくわかる。彼の子どもたちに対するアドバイスの当否はひとまず置いておく。この本のなかで大人社会・家族・処世術について触れているところを見てみる。彼の人柄が見えてくる。

彼は言う。
 大人の社会は利害関係が発生して、損得勘定で動くことが多い。
 仕事ができるかどうかで人生の80%は決まる。
 いわゆる友だちよりも、(仕事に関して)教え教えられる関係のほうが重要になってくる。
お金を稼ぐためにうまく仕事するかが大切だということだ。彼がサラ金御用弁護士になって短期間で年収数億を稼ぐようになったことが理解できる。では現在の政治家稼業はどこで損得勘定があっているのだろうか。きっと私の想像できない部分で帳尻があい、損をしない計算になっているのであろう。「親切で何も要求しない正義の味方なんていない」と彼は明言する。

家族についてはこう書いている。
 家族が大人にとっての友だちだ
 家族がいればさびしくない
 損得抜きで並列の関係でいられる
これは友だちについて「そもそもが役に立たない存在」メリットなし、面倒ばかり、いっしょにいてもなにか与えてくれるわけではないと断じているのと好対照である。家族についての本心だろう。彼の3男4女の子だくさんもそれを裏付けている。しかし「もちろん、これは平和な家庭の場合で、家族が落ちつかない場合は、お父さんもお母さんも、そとに友だちを求めてさまよっていることもままありますが・・・。」とも書いている。自分の親のことが念頭にあるのだろう。家族関係ではずいぶん苦労をしたのだろう。政治家は公人でありプラバシー権は制限される。しかし家族は別である。橋下氏の家族について云々することは控えるべきである。彼にとって家族以外の人間関係は損得有の上下関係でさびしいもののようだ。

彼は生き方として、強いものについていくことをすすめる。
 力関係を見てよく動く
 力関係をうまく使う
 強いもののパシリになる
スネ夫のような生き方をすすめる。一時期かれは紳介のパシリであった。今は誰のパシリなのだろうか。大型公共事業を期待する関西財界か、サラ金特区を期待する貸金業界か、カジノ建設を望む暴力団か、教育の政治支配をめざす右翼勢力か。

橋下批判が各方面から起こっている。流れは変わっている。かっての「橋下ブーム」は終わった。橋下氏は空気を読むことの重要性をよく知っている。周りの反応をよく見て、政治の世界から退く準備をする時だ。彼は「いじめられた場合はもがいてはいけない」と書いている。落ち目の時はもがかず静かに消えていけばいい。いまこそ政界をさまよわず自分の家庭に帰る時である。

2011年10月28日金曜日

「新潮45」 11年11月号「最も危険な政治家」橋下徹研究を読んで   特異なパーソナリティは自ら明らかである わざわざ親のプライバシーを暴く必要はない


「新潮45」11月号が売れている。書店に行ってもなかなか手に入らない。アマゾンでも売り切れで、中古にプレミア価格がついてと定価の倍の値段(送料含む)で売られている。とりわけ知事選・市長選挙が行われる大阪地域では飛ぶようにうれているそうだ。橋下氏への関心が高い。私は何軒かの書店を捜し歩いて、ようやく阪急梅田の紀伊国屋で一冊手に入れることができた。新潮社は増刷中である。
 特集「最も危険な政治家」橋下徹研究には次の4本のレポートが掲載されている。
1、孤独なポピュリストの原点 上原善広(ノンフィクション作家)
死亡した実父は暴力団組員だった。これまで一度も書かれなかった「橋下徹の真実」
安中の橋下家 父親の稼業 飛鳥の府営住宅で 過去との決別 政治家と弁護士の「資質」 大博打
2、大阪府知事は「病気」である 野田正彰(精神科医、ノンフィクション作家)
挑発的発言、扇情的な振る舞い、不安定な感情 それから導かれるのはある精神疾患である 
「いじめ」育ちの空気読み すり替えと弱者攻撃 掃除をしない高校生 知事の「病名」
3、机上の空論だらけのインチキ政策 薬師院仁志(帝塚山大学教授)
大阪が都になれば、景気がよくなり、経済も成長するのか。そんな保証はどこにもない。
大阪都構想の本当の狙い 借金を増やした橋下府政 空論につぐ空論
4、盟友・紳助が抱える時限爆弾 一橋文哉(ジャーナリスト)
知事も暴力団も絡めて、紳助が沖縄で始めようとしていたビッグビジネスとは何か
  不動産投資のアドバイザー 紳助は「芸能舎弟」である 集結したカネの亡者たち カタギに迷惑をかければ除籍

政治家は公人であるのでプラバシー権が制限されるのは当然である。公共の福祉が優先される。大きな権力を握ることになる政治家の人となりが明らかにされ、有権者がそれを知ることは意義があり優先される。特に政治家本人の幼少時より現在に至る行動・発言・文書の研究はその人のパーソナリティを知る助けになる。野田正彰の分析によれば橋下氏は「自己顕示欲型精神病質者」「演技性人格障害」である。こんな人物が政治家・首長にふさわしいかどうかよく考えなければならない。

しかし、本人の力ではどうすることもできない親の「出生地」「職業」「死因」を明らかにすることが公共の利益になるとは思わない。家族のプライバシーについては慎重に守る必要がある。家族のプライバシーの開示なしには、公人本人のパーソナリティが解明できない場合に限って家族のプライバシー権は制限されるのだろう。橋下氏の場合は本人の言動・著作から本人のパーソナリティは自ら明らかである。わざわざ親のプライバシーを暴く必要はない。




  
 

2011年10月24日月曜日

元サラ金御用弁護士橋下徹氏がなぜ天下国家を語るのか



橋下氏は、辞職を同意した本会議で「大阪の統治機構のあり方、大阪府・市のあり方をなんとかしなければという思いが日に日に強まっている。今や押さえることができない」と表明。(朝日新聞)「明治維新、倒幕になぞらえ『沈みゆく日本に黙って乗っとくわけにはいかない。沈む前に、地方から(改革を)やらなきゃ。その地方は、この大阪しかありません』と訴えた。」(日刊スポーツ)大阪のため、日本のために居ても立っても居られないと言うのである。本当にそれが彼の本心なのか。それとも方便なのか。彼の経歴を見ると本心とはにわかに信じがたい。

橋下氏は大学を卒業した1994年に司法試験に合格。1997年に大阪弁護士会に弁護士登録。弁護士2年目の1998年、大阪市内に「橋下綜合法律事務所」を設立し、示談交渉による解決を専門にする。消費者金融大手の「アイフル」の子会社の商工ローン「シティズ」の顧問弁護士を8年間した。サラ金の事業を支える弁護士だったのである。その示談交渉で磨いたノウハウを本にしている。「最後に思わずYESと言わせる最強の交渉術」(日本文芸社)「心理戦で絶対負けない交渉術」(日本文芸社)には、どんな相手でも丸め込む48の極意、思い通りに相手を操る非常の実戦テクニックが書かれている。そしてその交渉の話術をいかしてテレビのバラエティー番組でタレントとして人気を得た。

サラ金側の示談交渉を専門にしていた弁護士がなぜ世のために働きたいと言うのか。彼はサラ金のもうけを増やすことにより、自分の収入を得てきた。サラ金御用弁護士だ。サラ金御用弁護士は一般市民の味方をしてきたとは考えられない。橋下氏に聞きたい。サラ金御用弁護士の彼と政治家の彼がどんな関係にあるのか。彼にとっては連続性があるのか、それとも過去を否定して今の政治家としての彼があるのか。

きっと橋下氏は過去の自分を否定するとは言わないだろう。そうなら能弁な彼であるこれまでに自ら表明しているはずだ。世間がどう思おうとサラ金御用弁護士をしてでも金を稼ぐことが彼の自己実現であったのだろう。しかしそれだけでは彼の心は満たされなかった。そして今は政治の世界で権力を握ることが彼の自己実現の道になっているのだろう。

心理学者の小倉千加子は橋下氏を評して「振幅が大きく、傷ついた野獣を心に抱えているようだ」(朝日新聞)と書いている。私もそんな気がする。何をしても満たされない自尊心と肥大化した自己愛が彼を衝き動かしているのだろう。「傷ついた野獣の心」は大阪市長になっても癒されないだろう。次は何を目指すのだろう。内閣総理大臣か。何か破たんの結末が見えるような気がする。細川・小泉・麻生元首相などの「上流階級」出身者は政治の世界で破たんしても何食わぬ顔で政治は卒業しましたと涼しい顔で生きていく。しかし橋下氏のような庶民の「成り上がり」が権力闘争で敗北するとそうはいかない。袋叩きの目に合うことになる。松田勇作の演ずる昔の映画の主人公と重なって見える。

彼の内面がどうであれ、サラ金御用弁護士時代はローン返済困難者を多く泣かしたであろう。そして大阪府知事・市長を歴任し、新自由主義的手法で大阪府市民を泣かせることは看過できない。早く政治の世界からは足を洗ってほしい。いや洗わせたい。

「あらゆる星が北極星を中心として動いているように、世界は私を中心として動いている。私は秩序そのものであり、法律そのものである」(「ジュリアス・シーザー」シェークスピア)

2011年10月17日月曜日

映画エンディングノート「上手に死ねるでしょうか?」「上手に見送れるでしょうか?」

67才元熱血営業マンが健康診断でステージ4の胃ガンを診断された。そして半年後になくなった。胃ガンに本人と家族が取り組む様子をフリーの映画制作者である実の娘が撮影し監督したドキュメンタリー映画だ。 


「段取り命」の元営業マンは「私は死ねるでしょうか?上手に死ねるでしょうか」と自問する。上手く死ぬために「自らの死の段取り」とエンディングノートを作成し、律儀に実行する。


 こんな段取りである。
 ToDo 1 神父を訪ねる
 ToDo 2 気合いを入れて孫と遊ぶ
ToDo 3 自民党以外に投票してみる
ToDo 4 葬式をシュミレーション
ToDo 5 あわび、母
ToDo 6式場の下見をする
ToDo 7 もう一度孫と会う
ToDo 8 孫に挨拶 母に電話 親友と談笑 息子に引き継ぎ
ToDo 9 洗礼を受ける
ToDo 10 妻に(初めて)愛してると言う
ToDo 11 エンディングノート 


つまり妻、母、子供、孫、友人と関係を振りかえり残された時を大切に過ごし、別れを言うこと。エンディングノートには葬式の段取り、財産処理、近親者の今後が書かれている。 映画はこの段取りの遂行を順を追って描く。観客は緊張しながら、微笑みながら、涙を流しながら観る。そして映画を観た後、自分は上手に死ねるか、上手に見送れるか考えることになる。死についてはこれまで話題にすること避けてきたため、人はいかに死んでいくのか知らない人が多い。この映画は死を考え、話題にするいいきっかけになる。


 しかし死と遭遇し上手く対処するにはマニュアルだけではだめだ。死が訪れつつある本人と家族は自分の人生と自身の存在の意味を考え悩み苦しむ。この作品では、その本人と家族の死を目前にした恐れ悲しみ不安怒りなどは十分には描けていない。それは本作品がドキュメンタリーであり基本的に演出や撮り直しがきかないからであろう。なおかつ監督が主人公の娘で当事者であることが影響している思う。この映画を監督自身が小説化した「音のない花火」では娘自身の葛藤がうまく書かれている。才能のある監督の次回作に期待する。
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2011年10月13日木曜日

朝日新聞の「教育基本条例を問う」は秀逸だ 橋下人気の潮目は変わった


大阪府知事選挙市長選挙が近づいてきた。選挙では橋下府知事・大阪維新の会が提案する教育基本条例が一つの争点になる。朝日新聞が「教育基本条例を問う」と題して10月10日維新の会大阪市議坂井良和、12日ワタミ会長渡辺美樹、13日内田樹のインタビュー記事を掲載した。教育基本条例に関する論点を明らかにした記事である。多くの方が読まれることを希望する。

坂井良和氏は「エリート養成格差は辞さず」と明言する。「人格形成だけでは人は生きてゆけない。」「義務教育は9年から7年にして、残りの2年間は勉強でもスポーツでも趣味でも、好きなものに没頭すればいい。」「私は格差を生んでよいと思っている。」「まずは格差を受け入れてでも、秀でた者を育てる必要がある。」条例の基本的狙いはエリート養成であることを率直に語った。この記事を読めば多くの人は自分の子どもに「君は勉強しなくていい。外で運動でもしてなさい」と言われたような気がするに違いない。坂井氏はここまであけすけに語っても、非エリート一般人が支持すると思っている。たいした自信だ。坂井氏は教育基本条例の案を練った大阪市議で、裁判官・弁護士の経歴を持っている。坂井氏に質問したい「ではあなたは、自分のことをエリートだと思っているのか」と。

渡辺美樹氏は「教委の無力化ではなく機能強化を」と述べる。教育に競争原理を導入し、3年連続で定員割れし、改善の見込みのない府立高校は統廃合する方針については次のように言う。「競争をあおるだけでは意味はない。」「「不振店をつぶせば他の店の売り上げが伸びるわけではない。好調店の店長を不振店に送り込み、逆に不振店の店長を好調店に入れる。不振店の従業員は意識が変わり、好調店で学ぶことで不振店の店長も視野が開ける。結果、全体の接客レベルが上がる。」実際に企業経営をしているから言える言葉である。

内田樹氏は「競争原理はむしろ学力が下がる」と述べる。「大勢に順応してうまく世渡りする秀才ほど共同体にとって危険なものはない。上意下達組織は教育になじまない。」「利益誘導モデルに基づく条例案の考え方そのものが、今日の教育の失敗の主な原因だ。」「条例案が追求する『人材』とは、自己利益追求のために競争相手を蹴落としていくような人間。」橋下知事は「教育は2万%強制」というが、内田氏は「成熟した市民に育ってゆく過程に強制は効かない。」と指摘する。

実際の選挙戦は、実際の中身が明らかでなくほとんどの府民が理解していない「大阪都構想」に賛成か反対か、そして橋下と平松のどちらが好きか嫌いかいうイメージ選挙になる公算が大きい。そして橋下維新の会は今回の府知事・市長選挙で勝てば府民市民は教育基本条例を支持したと強弁するだろう。できるだけ多くの方が、橋下徹氏が推進する教育改革について理解され投票されることを希望する。



私は朝日新聞のこの記事のコピーを多くの人に配るつもりだ。この記事を読んで橋下維新を支持する人は少ないと思う。この3年間の橋下ブームは在阪マスコミがつくってきた。しかし、潮目は変わりつつある。この朝日の記事がきっかけで橋下維新は敗北したという日が来ると思う。